2021年
コロナウィルス対策をしながら、公演を行うにはどうしたらいいだろうかという模索は今年も続きました。それはすなわち、そもそも「公演」とは何かということやそれでも「上演」を続けねばいけない必然とは何かということを考え続ける1年でした。
文化庁の助成のせいもあり、2021年後半は舞台公演が増えました。しかし、本当に生きるために作らねばならない作品はどれだけあっただろうと思ったりもします。持続可能な作品制作の形を模索しながら、思考を深め続けています。
おそらくコロナに限らず環境問題はじめ厳しい状況は今後も続くと思われます。昨年は「真っ暗闇を歩く」と書きました。(それがダン体3のブラックホールへ繋がっているんですが)あらゆるものが不確かで、先が見えない。そんな時だからこそ、改めて身体あるいは生身で会うことが大事になっていくだろうと感じます。実感、体験を大切に、1日1日を暮らしていくのだろうと思います。
作品
◎こぶし館3つの光
こぶし館の光の跡を撮る 波田野 州平
こぶし館の光とともに在る 木野 彩子
こぶし館の光に時を視る 三浦あさ子
3名の作家が集まり、久松山の麓の洋館で作品制作を行いました。波田野さんは家に帰ってからその日限定で見ることができる映像作品『光跡』を。三浦さんは現在まで定点観測(光が季節時間により変化していく)を継続しています。私はヴァレリーの詩をベースに1時間のほぼ動きが決まっている「昼の光」と夕暮れまで変奏曲のように延々とつづくインスタレーション型のパフォーマンス「たそがれの光」を制作しました。
終演後観客の方々に言葉を残してもらっており、それをもとに、次の作品が制作される仕組みができました。
その後、12月にこぶし館のオーナー徳永進さんの活動をまとめる文章を書きました(2022年3月に発行予定)。学生時代からのハンセン病の患者との交流から現在のホスピスまで一貫して継続してきた視点がこぶし館にもあらわれています。それらを踏まえて、改めて、この場所でのあり方を考えていきたいと思います。
◎鳥取夏至祭2021
今年も県外の皆さんにお越しいただくことは断念せざるを得なくなりました。しかし1年のオンライン対策(オンラインパフォーマンス勉強会も開催)は大きく、各地の映像を送っていただいたり、デュアルセッションを行ったり、またそれらをライブ配信しました。
一方鳥取県内の参加者(アーティスト、学生等)が30名以上に増え、ナイトミュージアムとして夜のわらべ館全館使用しての探検は好評を得ました。
状況に合わせて柔軟に、感染対策をしながら規模は縮小しても継続していくということが大事だろうと考えています。
◎鎮
2018年にKIACにて『死者の書再読』を制作したご縁で、温泉寺本尊十一面観音の閉帳に合わせてパフォーマンスを制作しました。豊岡演劇祭は中止になってしまいましたが、少人数で開放した空間で行うよう配慮し、静かな舞の時間を持ちました。もともと大きなお祭りの後には祈りのための舞(人に見せるものではない)があるもので、3年の開帳期間に感謝し、次の開帳までの30年間を想い、修行は続いていくのでしょう。
奇跡的な天候具合も含め、贅沢な、そして幸せな会でした。
◎レクチャーパフォーマンス『ダンスハ體育ナリ?其ノ三 2021年踊ル?宇宙ノ旅』
2016年から始まったシリーズの新作はプラネタリウムから138万光年の旅に出てしまう特別版となりました。オリンピック、万博といった内容から「未来」について考えるもので、鳥取にきてから作ってきた作品「mobius」「死者の書再読」「銀河鉄道」「こぶし館」「鎮」がすべて織り込まれているかのようになりました。
其ノ二の時にも触れたように「みえないものをみようとする努力を私たちはしているだろうか」ということがテーマとしてあり、観客が能動的に想像力を膨らますことが重要であり、迫力や巧みさを魅せるのではなく、それぞれが自身の身体へと意識を向けるための試みが散りばめられている作品ともなりました。
制作中は宮沢賢治ワールドと思っていたのですが(作品内にも言葉が引用されている)、ふと「星の王子様」を読んで、ベースはこちらかもしれないと思ったのでした。(星の王子様、ちゃんと読んだのは終演後で、その時も本屋で本が光ってました。名作なのに読んだことないなんてと怒られそう。終わってから知る、そんなものです)たくさんの星のどこかだけれど、どの星でもあるんだ、そんな話をした翌朝、身体の中にお星様ができていて入院沙汰になるという衝撃的な事件が起きました。
観音様のご利益か、回復し(お医者さんも驚いていた)、元気にしています。
これまでも作品を作る時は命がけというか、誰かを救うためだったり、禍を避けるためだったり、方違えもしながら、最大限努力をして望んできておりましたが、そろそろ歳でしょうか。しばらく様子を見つつ、少しずつ続けていく方法を考えていこうと思います。
この件も含めすべてが必然の中あり、つながっているということを改めて感じました。
写真:ユーリア・スコーゴレア
企画
◎わらべ館 音とからだであそぼう! 即興音楽とダンスのワークショップ
昨年まで文化庁事業として行ってきたファシリテーター養成のための勉強会ですが、形を変えつつ継続していくことにしました。荻野ちよ さん(ダンス)、田中悦子さん(ダンス)、森本みち子さん(音楽)、高橋智美さん(音楽、わらべ館職員)とほぼ月1のペースで行っています。鳥アート中部地区地区事業として倉吉でも11月にワークショップを行い、少しずつ続けていきましょうと話しています。冬の間は雪の問題もありしばらくお休みですが、またぜひ遊びに来てください。
その他
◎2021年1月1日
日本海新聞さんに、知事さん、中島さん(鳥の劇場)、棚橋さん(ビオラ奏者)との対談が掲載されました。お正月特集ということでカラー見開き二面。一生に1度だろうということで永久保存版になりました。
そんな1日でしたが、当人は雪の砂丘で写真のモデルとなっていました。鳥取出身の写真家水本俊也さんの撮影のもので、県内外で展示が行われているようなのですが、私も全貌はまだ見ていません。シチリアで溺れる役を演じた時以来の過酷ロケでしたが、なかなかない機会となりました。なお、その時の経験がダン体3の砂丘映像に生かされています。