2016年12月31日土曜日

2016年

2016年
今年は大きく変化する一年でした。
鳥取へと移住することになり、多くの人に出会いました。
そしてそんなに必然的にはなれることになる人も出てきます。それでもまたいつか出会うものと思っています。今年の作品"Mobius"は様々な人の縁がずっと円を描いていて、つながることなく、しかしお互いに影響しあいながらあり続ける星の様な作品でした。いのちはいつかつきますが、大きな流れに押し流されながらもその気配とともにあり続けていくことを作品が進化していく過程で見てきました。この作品は今から5年前に作ろうと思っていた作品のエンディングに考えていた構想と昨年のソロをもとにしています。生き続けるとこういうこともあるのかと実感します。

大学での仕事はまだまだ慣れず、先生方にご迷惑をおかけしています。もしかしたらずっとなれないままなのかもしれません。なにぶん私は半年後くらいまでのことしか考えることができないで生きてきました。5年後10年後を考えて生きて生きたことがないということも今年初めて知りました。どこまで勤めていけるのかしらと思いながら、とにかく一生懸命進んでいくだけです。

鳥取大の前任佐分利先生より、ぽろぽろと話していた作品制作の流れを文章化しなさいと言われ、おそらくそれは今後やっていく必要があるだろうと考えられました。というのも、自分の言葉で自分の踊りを語ることができる人が少ない。それがたとえ支離滅裂に見えてよくわからなくとも、それでも何か、そして誰かの手がかりになるかもしれないため、やはり記してみるべきではないか。

昨年の項目を読み返してみると

「一生が全てつながっていてそのまま作品みたいと思う。
一つの論文というのはあまり重要でなくてその積み重ねていった結果として見えてくるものであり、そのうちのひとしずくに過ぎない。さらに自分は大きい宇宙のお星様の一つで(柳宗悦は微塵という)いてもいなくても、してもしなくてもあまり差はなく、しかしたくさんもらってしまった愛情のお返しとして一瞬光ってみようかとする作業だなあと思いました。(あ、アマノガワだ。)私の作品は気がつけば全てつながっていて、この論文も拙いなりにつながっていて、死ぬ時までの(もしくはもっと先への)予言の書みたくなっていくのだなあと思うのです。」

と書いていました。
修士論文はまだ3分の1くらいしか公開されていないですが、確かに予言の書のようになっており、修士実技(そんなものはないのですが)であった「ダンスハ體育ナリ」と合わせてこの5年位で私がしなければいけないことを語っているような気がします。
修士論文を書いていく過程で私は、物事に「必ず正しいはない」という当たり前のことを知りました。政治や報道や様々な力関係で常に「正しい」や「良い」の概念は変わっていきます。一作家として時代の流れを感じ、おかしいと思った時には警告する。それが役割だとすれば文章で書くか作品にするかの違いでしかなく、研究者であり振付家である立場として双方から行っていくべきだろうと考えました。

「ダンスとはなんなのでしょう」と学生が聞きます。
「既成のダンスにとらわれず新しいダンスを作るのですよ」と私は答えます。
「ダンスとはあくまで手段であって、そのもとに何を明らかにしたいかがあるはずです。身体を使ってそれを考え、どんな手段を使っても最終的に表現すればそれでいい。」

明らかにしなければならない何かがなければ何も生まれない。
生み出す必要がない人はそのままで構わない。
その方が幸せなこともある。
それでも表さねばならない人のために芸術というものはあるのだということにも気がつきました。世の中が成熟し、皆そこそこ自由かつ豊かな生活を送れるようになり、それでも満たされない何かを感じているから、皆何かを表現したい。でも本当に人の心を打つようなものは切実に訴えかけるものである必要があり、何らかの犠牲を払わねば出来上がらない。それでも訴えねばならないものがあるだろうか、それが作家となるかならないかの境目ではないかと思いました。

得るものと失うものはほぼ同数。

また一年年をとります。多くのものを得、また失います。それでもまだ生きていく。そんな2016年でした。
心穏やかに健やかに。また良き年となりますように。
木野彩子




各作品の詳細は載せませんがまず、簡単に箇条書きにて。各作品の詳細はこのHP上のラベルで検索してみてください。http://saikokino.blogspot.jp

また大学に務めることになったのを機にウェブページを作りました。全作品は網羅できていませんが、こちらも是非ご覧ください。木野による作品解説項目を作りました。https://saikokino.jimdo.com

◎作品

ダンスハ體育ナリ@TPAM ダンスアーカイブプロジェクト BankART studio NYK 3Fホール

Mobius 鳥取@HOSPITALE(旧横田医院)

Mobius 東京@求道会館
 En attendant,,,,,
Mobius シカゴ@Hamlin Park Theater
 About Rachel

   
◎音楽とのセッション
音楽とダンス、ハーブの時間@森のテラス(東京)
 ピアノ:池田千夏、ハーブ:ジプシーカフェ葉花(八代真由美、金子優子)

Sound and Cultivation@レストランCultivate(三重)
 音楽:大岡英介、Ryotaro、映像:仙石彬人、ダンス:阿竹花子

◎その他
修士論文「コミュニティダンスの歴史的原点と概念の再構成に関する研究〜日英の現状からみたプロモーション再考のために〜」

第1章、第2章分を再構成して「コミュニティダンスの日英の現状から見たプロモーション再考」として鳥取大学紀要に載せました。

SPAC enfant ANGELS 振付アシスタントワーク
 2年の時を経てメルランニヤカム氏と静岡の子供達のアフリカンコンテンポラリーダンス作品が完成しました。(昨年はワークインプログレスとしての公演でした)前編タカセの夢から7年。今年は大学との掛け持ちでなんとか乗り切りましたが、ここからは子どもたちに委ねていきたいと考えています。