ごあいさつ
2017年からはじまったこの「鳥取夏至祭」は5年目を迎えました。私(木野)が鳥取に赴任し、この街を知っていくのと共に、新たなパフォーマンススペースや出会いを求めて開拓を続け、鳥取県外の友人ダンサー、音楽家が立ち寄る機会となりました。コロナウィルス感染対策もあり、オンラインとオフラインの併用型になって2年目。小さくてもできることをし続けることの大切さを改めて思います。学生たちの1年は短く、今、ここで出会えなかったらもしかしたら一生出会うことはない。だからこそ、継続していかねばねらないのです。
ナイトミュージアムでは昨年行うはずだった企画をやっと実現します。県外のアーティストは来ることができなくなりましたが、その分鳥取の面白い人々に出会いました。普段は普通に学校の先生などお仕事をしている、でも一本筋の通ったアーティストがぽろぽろと出てきました。アートも地産地消。今こそ鳥取でなければできない表現を鳥取から発信していくことが大事なのではないでしょうか。自分の住む場所の良さを発見し、誇りを持つこと。オリンピックやコロナに踊らされることなく、独自の文化を生み出し続けること。いろんな人がそれぞれの立場で意見を述べることができる場所。鳥取はそんな場所になっていくのではないかという予感がします。
一方で、現実社会ではそんな当たり前のことがしにくくなっているとも感じます。時代による変化というのはありますが、少数派の声は後回しにされ、経済効果だけが求められてしまう。芸術の価値は、お金でははかれないものですが、集客数や話題性だけに囚われてしまう傾向があります。国のお金をもらっているのだから国のいうことをいえと言われかねない始末。鳥取夏至祭はもう一度遊ぶところから考え直してみようという試みです。面白おかしい大人達に巻き込まれながら、学生達も一緒に脱線してもいい人生の豊かさを作り出す、そんな試みです。お金の問題じゃない。ほんたうのさいわいとは何か、それを問うための運動体が作られていくことを目指しています。
今年から鳥取夏至祭の実行委員会に個人名を入れました。メンバーやわらべ館の皆さんに支えられるようになり、少し規模が大きくなりました。変な先生だなと思いながら巻き込まれる学生さんも増えてきました。この子達がまた新たな星となり、いろんな人に出会うきっかけになっていくかもしれないと信じています。
これまで参加してくださった皆さん、鳥取を気にしてくださっている皆さん、いつの日か、またこの土地でお会いできる日を楽しみにしています。鳥取夏至祭実行委員会の皆さん、参加者の皆さん、わらべ館の皆さん、いつもありがとうございます。楽しい時を過ごしましょう。たとえこの世の中は真っ暗闇になっても、その記憶が光となる。だからこそ。
木野彩子
鳥取夏至祭のこれまで
•2017年駅周辺の賑やかなエリア(風紋広場、けやき広場、ヤマネデンキ(現office24)、袋川土手など)
•2018年とりぎん文化会館周辺の文教地区と呼ばれるエリア (とりぎん文化会館中庭、県立博物館、わらべ館、カルマ、真教寺公園など)
•2019年比較的静かな住宅街エリア(樗谿公園、鳥取東照宮、樗谿グランドアパート、Hospitale(旧横田医院)など)
•2020年オンライン・オフライン開催(わらべ館)
鳥取夏至祭2021
コロナウィルスの感染拡大が進行する中、「芸術文化のあゆみを止めてはいけないのではないか」とわらべ館の方と相談し、開催を決定したのが今年の3月。それからできることを模索してきました。多くの都道府県で緊急事態宣言が出される中、アーティストを招くのではなく、鳥取県内のアーティストで行うべく、計画を立て、これまで関わってくれていた県外の皆さんには映像等でサポートしていただく形にしました。また、会議システム Zoom を利用したワークショップや実行委員会を毎週2回程度、定期的に開催し、この企画の運営を行ってきました。
昨年の経験が生かされ、オンラインの表現や可能性の模索に拍車をかける一方、生身の身体の表現の豊かさを改めて感じます。身体から発している波動のようなものはやはりオンライン・映像ではなかなか味わうことができないものです。そのような喜びを噛みしめながら、今年も夏至を迎えます。今回くることができなかった皆さまに愛を込めて。いつか、必ず、またお会いしましょう。
鳥取夏至祭2021HPにてナイトミュージアム の映像を公開しています。7月22日まで。