2013年12月12日木曜日

からたちから

「からたちから」
無事終了しました。パフォーマンスの写真はない状態ですが、情報をのせておきます。





写真古里麻衣



日時:2013128日(日)18時半開演
場所:日本基督教団 巣鴨教会 170-0005 東京都豊島区南大塚 1-13-8
料金:前売、当日共に 2500円、学生1500
構成、出演:木野彩子
特別出演:コールシャンティ混声合唱団(指揮 野本明裕)、渡辺善忠(巣鴨教会牧師)、戸井香織
音楽:    上地正彦“Amanogawa プロジェクト”(2012)
Tomas Luis de Victoria “Missa Quarti Toni(第4施法のミサ)よりキリエ
山田耕筰“からたちの花”(上記2曲コールシャンティ合唱団合唱曲)
J.S. Bach “前奏曲とフーガBWV543”よりフーガ(演奏:渡辺善忠)、
同 ゴルドベルク変奏曲よりアリア(演奏Glenn Gould 1981
宣伝美術、写真:古里麻衣
映像記録:御代田直樹
協力:古里麻衣、内藤久義、Oliver HartmannAtelier Sentio、鳴海康平(第7劇場)、Amanogawaプロジェクト新百合ケ丘20120311にご参加くださった皆様、巣鴨教会に関わる皆様
主催:キノコチケット/木野彩子


ごあいさつ

本日は巣鴨教会パフォーマンス「からたちから」にようこそお越し下さいました。
昨年6月に「からたち」を制作して1年半、少しずつ教会に通い、キリスト教について考えてきました。1年以上がたった今でもたくさんの疑問をもっており、牧師さんや信者の皆さんにあたたかく見守られながら、作り直す作業を行ってきました。
私は今でもキリスト教信者ではありませんが、多くの人が教会を通してつながり関わりあい、2000年という長い時間を経て続いているからには、その時代そのときに「何か」はおきたはずだと考えます。それを探求し研究しつづけているこの教会の人々の姿勢はとても真摯であり美しいと思っています。
また、合唱団の皆さんの練習に参加させていただきながら、一つ一つの音を丁寧に作り上げ、重ね上げていく過程はまさしくキリスト教の信仰と研究の歴史とともにあり、音楽と宗教が密接に結びついていることを思いました。
ダンスと一言でいっても様々な作品がありますが、この作品(このシリーズ)は私にとっては自分と向かい合うことであり、すべてを受け入れていく作業です。
昨年は「光が広まっていく」ことをイメージしました。
今年は「光は収束していく」ことをイメージしました。
友人に指摘されて気がついたのですが大学時代卒業公演のためにつくった作品は真っ暗な中を外の月明かりだけで踊るものでした。(その作品は日の目をみることはありませんでした)そのときに既にこのシーンが出来上がっていたのだということに気がつきました。
15年以上がたち、母校のそばの巣鴨教会にて、やっと上演できるようになったこと、それもまた幸せなことです。

光がなくなっても生きていくために宗教は生まれ、神という存在がある。
そして神は既にそれぞれの人の中にある。
ダンスですべてを語ることはできません。私もまた、これからも学び考えて続けていくのではないかと思います。

          みんながめいめいじぶんの神さまがほんたうの神さまだといふだらう。
けれどもお互ほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう。
宮澤賢治「銀河鉄道の夜」より

ごゆっくりお楽しみください。

                                                                          



1 巣鴨教会とは
巣鴨教会は1876年設立の歴史ある教会。プロテスタント改革長老派(カルヴァンをルーツとし、聖書の学びを重視する伝統が特徴)。礼拝堂の椅子は第二次大戦後から使われている。1階ホールはかつて幼稚園として使われていたが、園児数の減少とともに園は閉鎖されて、現在はコールシャンティはじめとして10以上の合唱団の練習などに活用されている。
巣鴨教会の前身の「自営館」時代に山田耕筰が入館し、そのときの思い出を元に「からたちの花」(作詞北原白秋)が創られたことに基づき、教会敷地内に「からたちの花」の碑がある。なお、その碑のまわりのからたちは北原白秋記念館よりいただいた種が実ったもの。


2 「からたち」とは
2012年北池袋の小劇場Atelier Sentioが主催するフェスティバルSentivalの一環として木野が発表、好評を得た。自分の人生と巣鴨教会の歴史を重ね合わせながら語り踊る、演劇要素を含む作品。すべての人生は星のようにきらめいている。東日本大震災をうけて作成したボディワークと語りのワークショップAmanogawa プロジェクトの参加者を巻き込み、ろうそくの光を効果的に用いてキリスト教の伝搬を構成した。


3 コールシャンティ混声合唱団
1963年創団、巣鴨教会を拠点に活動する混声合唱団。指揮者、指導は野本明裕氏。団のライフワークとしてTomas Luis de Victoriaのミサ曲、モテットを手がける他、一般への合唱普及を目指し、日本語の歌曲も多く扱う。合唱は身体の裏付けが必須であるという考えから縄跳びや体操などのボディワークを取り入れている。毎年巣鴨教会のクリスマスキャンドルサービスにて合唱を行っている(今年は1223日)。
合唱曲
山田耕筰作曲、北原白秋作詞“からたちの花”
ビクトリア“Missa Quarti Toni(第4施法のミサ曲)”よりキリエ
主よあわれみたまえ、キリストよあわれみたまえ、主よあわれみたまえ


4 Amanogawa プロジェクトと東日本大震災について
Amanogawa プロジェクトは川崎市アートセンターで東日本大震災から1年を経て制作した映像作品(https://sites.google.com/site/amanogawaproject/)。ボディワークと語り合いを繰り返した記録(映像、写真、テキスト)であり、前回の「からたち」ではそれを舞台上に再現しました。
今回コールシャンティ混声合唱団に参加していただくにあたり、いつかは旅立っていかねばならない人間のイメージを重視し短くまとめることにしました。


5 J.S. Bach “前奏曲とフーガBWV543”よりフーガ
昨年の「からたち」カーテンコールの候補曲として渡辺牧師にご紹介いただいた曲。実際に使用はされませんでしたが、その場で即興的に踊ったダンスはおそらく木野即興史上最高ともいう出来でした。渡辺牧師によれば、その昔東池袋で舞踏家大野一雄さんの舞台で演奏をした曲とのこと。なお、「からたち」初演日は大野一雄さんの三回忌でもありました。


6 みんないなくなってしまいました
コレヘトの言葉1章2−7、9より
コヘレトは言う。なんという空しさ
なんという空しさ、すべては空しい。
太陽の下、人は労苦するが、すべての労苦も何になろう。
一代過ぎればまた一代が起こり永遠にたえるのは大地。
日は昇り、日は沈み あえぎ戻り、また昇る。
風は南に向かい北へ巡り、めぐり巡って吹き風はただ巡りつつ、吹き続ける。
川はみな海に注ぐが海は満ちることはなくどの川も繰り返しその道程を流れる。

かつてあったことは、これからもあり
かつて起こったことは、これからも起こる。
太陽の下、新しいものは何ひとつない。




7 Angel’s bone
2007年に The place (ロンドン)で制作•発表した5分間の作品(Touch woodという企画の一部)。曲は“ゴルドベルク変奏曲”よりアリア(演奏Glenn Gould 1981)。実際の作品では肩甲骨の動きを見せるべく身体の向きは横向きで演じています。


8 はじめに言(ことば)があった
ヨハネ福音書1章1−5より
初めに言があった。
言は神とともにあった。言は神であった。
この言は初めに神と共にあった。万物は言によって成った。
成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった。
言のうちに命があった。
命は人間を照らす光であった。
光は暗闇の中輝いている。
暗闇は光を理解しなかった。


9 わたくしという現象
          宮沢賢治「春と修羅 序」より(抜粋)
わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)


10 “からたちの花”
山田耕筰作曲、北原白秋作詞。巣鴨教会は山田耕筰ゆかりの教会として知られ、教会前に記念碑がある。
     からたちの花が咲いたよ

白い白い花が咲いたよ

からたちのとげはいたいよ

靑い靑い針のとげだよ

からたちは畑の垣根よ

いつもいつもとほる道だよ

からたちも秋はみのるよ

まろいまろい金のたまだよ

からたちのそばで泣いたよ

みんなみんなやさしかつたよ

からたちの花が咲いたよ

白い白い花が咲いたよ